お知らせ

鹿野苑のつどい 「性の違いって何んだろう?」を開催しました。

お釈迦さまがお悟りを開かれた12月8日の成道の日にちなんで行っている大泉寺成道会「鹿野苑のつどい」では、毎年、成道会の法要と学習会を行っております。

本年は11月8日にオンラインにて、仏教における「いのちの在り方」や「生き方」を改めて考えようと、「性の違いって何んだろう?」と題して、行政書士、現新宿都議で、トランスジェンダー女性としてLGBT研修などの講師も務めていらっしゃる よだ かれん さんをお迎えして、「性の違い」や、「多様ないのち」在り方、「幸せな『いのち』の在り方」について学ぶ会といたしました。

定員30名のところ、後日視聴も含めると40人近い皆さまと共に学ぶことができたことを大変嬉しく思います。

以下、よださんのお話しをまとめてみました。

「性の違いってなんだろう?」
多様ないのち=性、 「LGBT(Q)」、 セクシャルマイノリティ(性的少数者)を取り巻く環境と、
よださん自身が感じてきたこと。

「性の多様性」と一言で言っても、実際は表しきれないくらいに多様です。しかし男性か女性のどちらかであることが前提とされている社会では、そこに適合できずに生きづらさを感じる人がいるという事実があるのだそうです。

 

そこで必要になってくるのが「理解(共感、思いやり)」そして「制度(法律、条令)」の両輪です。その二つがうまくまわって初めて生きづらさが解消されると考えられますが、日本では法律や合理的配慮で性的少数者が守られていないことが多く、LGBTに限らず、人権感覚に乏しいと言われています。日本には差別がないなどと言われますが、社会の認識不足から、家族や親族と疎遠になってしまったり、同性婚の法律がないために相続権がない、部屋が借りられない(職業差別、国籍などによる差別も)、死の間際にも病室に入れず、その場でカミングアウトしなければならない、などとということもあるのだそうです。

現在は、東京都渋谷区の「パートナーシップ制度」の誕生を皮切りに、同性カップルでも法律婚に準じた取り扱いをする自治体も増えてきていますが、人権と平和を謳うオリンピック開催都市の東京都では、残念ながらまだこの制度がありません。

覚えておきたい言葉

カミングアウト➡ 当事者が本人の意思で他者に自分の性自認や、性的指向を伝えること。
アウティング➡ 本人の承諾なく他者に話すこと。当事者の社会での居場所をなくす可能性があるためアウティングは凶器である。パワハラ防止法で、防止策を講じることが義務付けられました。
アライ(ally)➡ 理解者。支援者。
ある調査では日本のLGBT 層の割合は人口の8.9%(左ききの人やAB型の人の総数とほぼ同じ。)と言われており、ぜひ知っておきたい言葉です。

トランスしてみてわかったこと

女性として生きることを選び政治の世界を目指すようになったときに、日本の政治家に女性が少ないことに気づき、女性が抱える生きづらさにも目が向くようになったとよださんは言います。そんな日本のジェンダーギャップ指数(女性の社会進出などを示す男女格差指数)は世界153か国中121位と男女のバランスがとれておらず、2018年には政党の立候補者を男女同数にする努力義務を促す法律ができたものの、実際には実現していません。

最近でも、区議会議員や国会議員による差別的発言を耳にしますが、そういうこともジェンダーバランス(男女の割合)がとれていない、もっと言えば男女に限らずバランスがとれていないからなのではなとよださんは考えます。このような差別が起きないためにも、性の多様性とは「生き方」ではなく「そう生まれてきただけ」だと知ることや、教育を通して子どもたちにそれを伝えること、また、政治をはじめ意思決定の場にジェンダーバランスを整える視点を取り入れることが重要だとおっしゃいます。

「性の違い」による「生きづらさ」や「苦悩」は、自分の内側から湧き上がってくるものでなく、社会や世の中から押し付けられたり与えられる面が大きく、それは同時に当人に問題があるのではなく社会に問題があるということでもあるということ。
だからこそ、教えてもらう。知って、考えて、行動する。誰かと共有する。
そして私たちにすぐに出来ることとして、「それぞれの身近な場所のジェンダーバランスや多様性を意識していったらよいのでは。」というよださんからのメッセージで話はしめくくられました。

 

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終了後に参加者の皆さまからご回答いただいたアンケートには、「わかっていたようでわかっていなかった。」「もっと知っていきたい。」「自分の生きづらさにも重なった。」「自分も気づかずに人の足を踏んでいたのでは。」「知ることで防げる差別や人権侵害があるのでは。」など、どこを抜粋してよいのかわからないくらいに思いのこもったご感想が寄せられました。

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よださんご自身の体験を通してのお話や、常に自分事として考える姿勢、この講演会から自身も学んでいこうとする姿が印象的でした。私どもも、この日の学びを日々に活かし、「幸せな『いのち』の在り方」を身近なところから考え実践し、社会にも目を向けてまいります。

私たちはアライでありたいと思います。

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よださんお勧めの 「性差(ジェンダー)の日本史」展は、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)にて 12月6日(日)まで開催中です。

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