お知らせ

この掛け軸に描かれているのは…。

皆さんは「12月8日」と聞いて何の日だと思われるでしょうか?

ある年代の方には太平洋戦争が始まった日、また、ある年代の方はビートルズのジョン・レノンが暗殺された日と思うかもしれません。それらも世界の歴史や音楽の歴史にとって、とても重要な日でありますが、私たち仏教徒にとって12月8日は成道会(じょうどうえ)という大切な日でもあります。

今から2600年ぐらい前の12月8日のことです。インドのブッダガヤという地の1本の菩提樹の下でお釈迦さまはお悟りを開かれました。お釈迦さまは29歳で王族の王子という身分を捨てて、6年間に及ぶ苦行に入られました。その間、もっとも辛いという苦行をもやり遂げてはみたものの、死への恐怖、病気を恐れる苦しさ、老いることの苦しさ、そして生きることさえも苦しいという気持ちから離れることが出来ませんでした。

そこで苦行を離れ、川で体を洗い、乳粥を食べて体調を整えて、1週間の坐禅の後、12月8日に夜明けの明星のもと、お悟りを開かれました。

お釈迦さまのお悟りは「空・くう=カラッポ」という考え方、また「縁起・えんぎ=縁りて起こる」という考え方にあります。

縁起とは「他」、つまり「自分以外のものや人と関係無く単独で存在できるものなどない、必ず色々な原因や多様な条件によって成り立っている」ということです。それは物質的なものの変化、生物学的な(体など)の変化、さらには心の変化も同じことです。私も、私たちの周りも、あらゆるものの存在が関係しあいながら成り立っているのです。

それはそもそも私たちが、色々な原因や多様な条件によって、仮に成立している、させていただいているだけの実体の無いものであるということでもあります。

これが「空」という考え方です。

この世界に絶対不変なものはない。これは絶対的な真理です。先ず、そこに気付くことが大切であり、そうした現実世界をいかに生きるのかというのが、お釈迦さまの気付き、つまり、お悟りの原点なのです。

お釈迦さまのお悟りを「三法印(さんぼういん)」と言います。

この三つの仏法の印とは
「諸行無常(しょぎょうむじょう)」~諸々の行い、現象に常であることは無い~
「諸法無我(しょほうむが)」~諸々の法(この世の仕組み)の中には私という実体など無い~
「涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)」~涅槃(悟りの世界)が静かに安らかで落ち着いている~
です。

私たちは色々なご縁の和合によって成り立っているものですから、何一つと「常」であるものはないのです。そこには私と言う「自我」も、実はないのです。「自我」という「こだわり」が悲しみ、苦しみの元となる。逆に言えば、私たちは、その「こだわり」から離れることによって、もっと自由で、変化し、成長し、向上していくことが可能であるいうことでもあります。

私たちは、そうした「こだわり」や「とらわれの心」から離れることで「涅槃寂静」(ねはんじゃくじょう)、つまり心静かな安心の境地に至り、人間として本来の清らかな「いのち」の在り様、その可能性を自覚するのです。

今年は色々な不安に悩まされ、苦しんだ一年でした。思うように出かけられず、仕事の仕方を変えざるを得ない中で迷いや戸惑いも多かった。経済的にも大きな不安が世界を覆い隠しています。

私自身はお寺に人が集うことが難しい中で、僧侶として何ができるのかと考えた一年でした。

でも、悪い事ばかりだったかと言えば、それだけではないようにも思うようになりました。

私にとっては家で過ごす時間が増えて家族との時間も増えたこと。また、改めて自分自身の仕事の仕方や、もっと言えば「生き方」を見直すことも出来たように思います。それは不安の中で「喜び」でもありました。

皆さんもこの一年、良い事や新しい発見は無かったでしょうか?。

「今まで通りに出来ない」のは変化していく時間や世界の中で「こだわり」を持ち過ぎているのではないか?

「以前と変わってしまって大変」なのは、以前の方法に「とらわれて」いるからではないか?

そうしたことに、苦しんだり、嘆いたりするだけでなく、「新しい自分」や「自分の生き方を考えること」を楽しんでも良いのではないか?人として「どうあるべきか」がわかっていれば、道徳や世情に戸惑うことなく、生き方がブレたりなんてしません。世の在り様を、「自我」を差し挟むことなく捉えて、「今の自分が出来ること」を見出していきたいものです。

12月8日の明星の光の中、菩提樹の下でお釈迦様が何を思われたのか?

その心を日々の生活の中に活かし、今こそ、お釈迦さまのお悟りの心を生かしてみましょう。

大泉寺住職 久保井賢丈

 

成道図(じょうどうず)

タイトルにある大泉寺の成道図のお釈迦さまは、正式には、出山図(しゅっさんず)と言います。お悟りを開かれたお釈迦さまが梵天さまの勧めにより自らの悟りの心を人々に広めようと立ち上がられた姿の絵図となっています。

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大泉寺ではこの成道会にちなんで「鹿野苑のつどい」を開催しています。本年はオンラインにて開催しました。開催レポートは「鹿野苑のつどい 「性の違いって何んだろう?」を開催しました。」にてご覧いただけます。

 

 

12月のお知らせ~坐禅会・写経会~

「絵本を届ける運動」に参加してみました。

じぞくのコラム Vol.9 「私だけの“いいかげん”。」

 

 

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