令和2(2020)年度 告諭 (曹洞宗管長のおことば)
告諭とは、毎年4月1日に曹洞宗管長から発せられる「おことば」です。
本年も4月1日付で曹洞宗管長・福山諦法禅師より「おことば」が発せられました。
この「おことば」を受けて曹洞宗の令和2(2020)年度の布教方針などがしめされ、僧侶や檀信徒の日々の指針としております。
今こそ自分自身の在り方を考え、社会の在り方を自分事として考え実践していく時ではないでしょうか。
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「人人悉く道器なり」
瑩山禅師のお言葉です。私たちは、元来、かけがえのない存在であり、それゆえに、一人ひとりが輝かしい人生を送ることが出来るのです。
その一方で、さまざまな社会の不均衡は多くのひずみを生み、私たちは苦悩を抱えながら生きています。また、頻発する災害がもたらす人びとのつらさや切なさを我が身に受け、悲しみを観じています。
誰一人として取り残されることのない世界を見据えて、いま、私たちの生き方が問われています。
ともに学びましょう。
己の益を先とする私たちの行いは多くの諍いを生んできました。本来の自己のありようは、他者との共生にあることを参究しましょう。その営みの中にこそ平和の実現があるのです。
ともに願いましょう。
私たちは、人やもの、自然環境に至るまで、数多のめぐみを受けて生きています。それらすべてと協調し、感謝の念を忘れず、世代を超えて安心して過ごせる世界の構築を願う菩薩の誓願に生きましょう。
ともに実践しましょう。
お釈迦さまは、智慧と慈悲を説かれました。あらゆる人に親切に接する慈悲の実践は、自ずと、心穏やかに暮らす智慧の心を育みます。それは、お互いがそれぞれを生かし合い、尊重し合う社会へとつながります。
道元禅師は、「ただまさに、やわらかなる容顔をもて、一切にむかうべし」と示されました。み仏の前に心静かに坐り、ご先祖さまに掌(て)を合わせ、皆が幸せに過ごせる慈しみ溢(あふ)れた世の中を目指して、ともに歩んでまいりましょう。
合掌
南無釈迦牟尼仏
南無高祖承陽大師道元禅師
南無太祖常済大師瑩山禅師
令和2(2020)年4月1日
曹洞宗管長 福山諦法